ブルー・ベル
内容
バークの前に現われた女はベルと名乗った。圧倒的な肉体を持つストリッパーながら媚びを知らず、その心は無垢だった…ベルの手引きで、少女売春婦だけを次々と襲う〈幽霊ヴァン〉を片付けてくれという依頼を受けたバークは、暗黒街を探り始める。だが、逆に血に飢えた空手使いをおびき寄せてしまった。現代ハードボイルドの鬼才が描く、殺人鬼とバークの凄絶な対決。一途な女の哀しき純情が心打つ、シリーズ代表作。
ここが凄い!
- 文章が平易で読みやすい。さくさく読める。
- 一章一章がとても短い。その分、章数が多い。177章もある。
- 主人公バークの用意周到さが凄い。ほとんど病的。
- バークファミリーのキャラクターたちがとても魅力的。特にママ。
- セックスシーンが多い。
- 解説が養老孟司氏
『凶手』よりは楽しめましたがそれでもやっぱり物足りないかな。事件の複雑さが足りない。
この手の作品で魅力的な女性が出てきたら大体ラストは予想できるわけで、問題はその描き方なのですが・・・。
ただ途中のヒロインの描き方自体は十分及第点だと思いました。ちゃんと主人公が魅かれることに読者が納得できるよう丹念に描写されています。
というかこの部分こそこの小説のメインといっても良いと思います。
アンドリュー・ヴァクスというとノワールというイメージがあったのですがこれ完全にヒーローものですよね。
セックスシーンがいっぱいある特攻野郎Aチームという感じです。
女彫刻家
内容
母と妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所に血まみれの抽象画を描いた女。彼女には当初から謎がつきまとった。凶悪な犯行にも拘らず、精神鑑定の結果は正常。しかも罪を認めて一切の弁護を拒んでいる。わだかまる違和感は、いま疑惑の花を咲かせた……本当に彼女なのか? MWA最優秀長編賞に輝く戦慄の第二弾!
ここが凄い!
- 文章は平易で読みやすい。とおもう。たぶん。
- トマス・H・クックと同じく過去の犯罪の真相を探るタイプの作品。
- 「女彫刻家」と刑務所で呼ばれているオリーブのキャラクター造型。
- 複雑な人間関係。
- ラブロマンス?
ミネット・ウォルターズは90年代を代表する英国女性ミステリー作家ということなので読んでみました。
うーん自分には合わないかも。同じ英国女性ミステリー作家のP.D.ジェイムズが合わなかったのでこの作品もそんな予感がしていたのですが残念ながら的中です。自分はこういった過去の真相ミステリーが苦手なのかもしれない。
この作品、全体的におどろおどろしい雰囲気なんですが、その要素となっている猟奇事件とオリーブの容姿がマジックでいえばフラリッシュ以上のものになっていないんですよね。もっともっと事件の根幹に関わっていてほしかった。
それにしてもひとつのシーンで視点がころころ変わる(海外作品に多い)のは何とかなりませんかね。非常に読んでて気持ちが悪い。
銃、ときどき音楽
内容
依頼人だった男が殺された。捜査を始めたメトカーフはカンガルーの殺し屋につけ狙われるハメに…。管理社会の暗黒街をクールに歩く私立探偵ならぬ民間検問士の活躍を描く、近未来ハードボイルド。ローカス賞処女長篇部門受賞作。
何も苦労はなかった。<スーパーチーフ>はめったにおくれることはないが、その日も時間どおりに着いて、問題の人物はタキシードを着たカンガルーを探すようにすぐわかった。
――――レイモンド・チャンドラー『プレイバック』
ここが凄い!
- 描かれる世界が凄い!質問禁止社会、進化動物、ベイビーヘッド、無料合法ドラッグ、民間検問士etc…
- かなり悲惨な世界なのに全体のトーンは割りと軽い。
- 主人公がタフであり続けられる理由が凄い。チャンドラーやロス・マクドナルドが描く主人公たちへのある意味皮肉となっている。
- 進化動物たちが可愛い。これでだいぶ救われている。特に子猫のサーシャ。再登場しないのが残念。
- 途中までSFギミックの普通のハードボイルド小説かと思って読んでたら後半に入ってびっくり!なるほどSFでなくてはいけない理由が分かる。
全体的にハードボイルド小説のパロディっぽい体裁ですが、本格的なハードボイルド小説としてもきっちり読むことが出来ます。そこらへんは作者のきっちりとした腕を感じます。
進化動物を有色人種のメタファーとして読むことも可能ですがそういった穿った見方はこの作品では無用かな。あんまり深く考えずに読んだほうが楽しいでしょう。