贋金つかい
「ベルナール、だってきみはまさか・・・・」こういって言葉を切った。
ベルナールは眼をあげた。そして、相手をはっきりとは見なかったがオリヴィエのおどおどしているところだけは見てとった。
「何さ?」とたずねた。「どうだっていうんだ?いってみろ。泥棒でもしやしないかっていうのかい?」
オリヴィエは首を振った。いや、そんなことではない。彼はたちまちしゃくり泣きを始めた。そして痙攣的にベルナールを抱きしめた。
ここが凄い!
- 決してウェルメイドとはいえない物語。
- 舞台は20世紀前半フランス。二人の作家、三つの家族、たくさんの少年たち・・・。
- 二人の作家が一人の少年を取り合う物語?あらすじについてはここ参照。
- 文章は平易で読みやすい。
- 自分が読んだのは河出世界文学全集山内義雄訳。挿絵がついてる!冒頭の人物紹介で豪快にネタバレしている。
- ジイドの少年愛嗜好丸出しが凄い。
- ジイド少女マンガ読みすぎだよ。あるいはBL本801本読みすぎ。
- なんといってもオリヴィエの乙女っぷり。
- 親友と会って赤面する。叔父と再会してどぎまぎする。親友と叔父との仲を疑って身を焦がす。
- メタフィクションの先駆け的作品らしい。作者が作品内に時々顔を出す。
- フロベール以降の小説としては珍しい。
- 一章丸々作者による登場人物批評にあてたりしている。
- 物語はある事件で唐突に終わる。
- がその事件の後があっけないので結構後味が悪い。
ジッドです、ジィドです。アンドレ・ジッドです。
『贋金使い』です、『贋金つくり』とも呼ばれていました。
なぜタイトルが二つあるのかについてはここ参照。
名作文学です。名作文学全集に載っているのだから間違いありません。けれど・・・
まさかこんなにも腐女子向けの作品だとは思いもよりませんでした。ドストエフスキーの『悪霊』やトーマス・マンの『魔の山』のように「そうとも取れるよね。」といった感じではなく完全にガチです。
正直言って自分にはレシ(物語)とかソチ(茶番劇)とか純粋小説とかメタフィクションとか難しいことは良くわかりません。
ただある種の人間にとっては非常に読んでて恥ずかしい(萌える?)小説であるだろうなということはわかりました。
登場人物の整理
<二人の作家>
<プロフィタンディウ家>
- アルベリック お父さん 予審判事
- マルグリット お母さん
- シャルル 長男 弁護士
- セシル 長女
- ベルナール 二男 母親の秘密を知って家出する。オリヴィエと親友
- カルーブ 三男
<モリニエ家>
<アザイス家>
- ヴデル お父さん 牧師 私塾を経営
- ヴデル夫人 お母さん
- ラシェル 長女
- ローラ 二女 不倫でヴァンサンの子供を妊娠
- アレクサンドル 長男
- アルマン 二男
- サラ 三女
<その他>
アンドレ・ジッド(André Gide,1869年11月22日 - 1951年2月19日)は、フランスの小説家。アンドレ・ジイド、アンドレ・ジードとも言われる。1869年パリ生まれ。ソルボンヌ大学中退。オックスフォード大学名誉博士。父親は、ソルボンヌ大学法学部教授を任じた。小説などの著作により、既成キリスト教的道徳・倫理からの解放を訴えた。欧州の広範囲に渡って文学的影響を与えた。その著作は死後、ローマ教皇庁により、禁書に認定された。政治的には当初は共産主義的であり、反ナチ・反ファシズムで知られる。戦前は、反戦・反ファシスム世界青年会議名誉議長を務めた。1936年にソ連を訪問してからは反共に転じ、『ソヴィエト紀行』でスターリン体制を痛烈に批判した。
NRF創刊者の一人。
小説には、生涯の妻であった従姉・マドレーヌの影響が強く、『背徳者』、『狭き門』などに彼女の影を持った女性キャラクターが登場している。しかしながら、私生活ではマドレーヌのことを愛していながらも20年以上も性交渉を行わずにいたり、彼自身の性癖である同性愛により結婚生活は破綻をきたしていたと言われている。この同性愛相手マルク・アレグレとの関係はジッドの『日記』に詳しく書かれている。また、同性愛だけでなく彼にはエリザベート・ヴァン・リセルベルグという愛人も存在しており、リセルベルグとの間に娘を成している。
1938年、最愛の妻マドレーヌが亡くなると深い孤独感に陥り、『今や彼女は汝の中にあり』を書く。
1945年にゲーテ勲章授与。1947年にノーベル文学賞受賞。
1951年パリで没。
日本では、和気津次郎による紹介を皮きりに、堀口大學、山内義雄などの手によって知られるようになった。小説家・石川淳による批評文もあり、石川はジッドの小説を翻訳してもいる。また、ジッドの著作は当時の文人たちに多大な影響を与えた。例えば横光利一の純粋小説論はジッドの『贋金つくり』が影響していると言われている。