わが手に拳銃を

内容
それは1発の銃声から始まった。15年前、大阪の町工場で母を撃った男はどこに?吉田一彰はその男・趙文礼をさがしていた。公安の田丸もまた趙を追っていた。ある夜、キタのクラブに現れた趙に中国語の電話がかかり、直後銃声が轟いた。そして、その時から一彰は、裏社会に生きる男たちの非情な闘いにのめりこんでゆく……。

ここが凄い!

  • ぐいぐい読ます文章力。上下二段組み300ページ以上あるのにあっという間に読めます。
  • 銃器の詳細な描写。正直後半の銃にかけられた罠のくだりはちんぷんかんぷんでしたが。
  • 主人公と李欧の男同士の友情を超えた関係。

この小説はいろいろ欠陥がある小説だと思います。
プロットあるいは構成が冗長で散漫です。
さらに李欧の存在がマクガフィンとしてあまり機能していないと思います。
大勢の男たちがなぜああも一人の男に魅かれそして振り回されるのか。そこらへんがいまいち描写しきれていない。
ですから主人公が李欧に魅かれた理由がもう外見的に一目ぼれしたとしか受け取れなくなってしまいます。
あの大学の助教授の奥さんの存在は主人公がゲイではないということを描写するための装置だったのでしょう。
つまり主人公はゲイではないけれどそれでも李欧という男に魅かれたという風に描きたかったのだと思います。 
ですがその肝心の李欧のなぞめいた魅力凄みの描写が中途半端なのでどうしても主人公がゲイにこちらには思えてしまうのです。


要するにこのころの高村薫さんは照れがあったのだと思います。
男同士のそういった関係を描きたいのであればもっと皆川博子氏のように趣味妄想全開のほうが良いですね。中途半端は良くないです。非常に惜しい作品だと思いました。

わが手に拳銃を
わが手に拳銃を
posted with amazlet on 07.01.27
高村 薫
講談社
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