愛の続き
「(省略)ま、とにかく連中は二つ行動ルールを守ってた。一つ目、つねに勝て。二つ目、つねに裏をかけ」
ほかの場合であれば、群居する動物にとって「つねに裏をかけ」というルールは確実に絶滅につながるという進化論的な展望をゲーム理論を使って解説したくなったかもしれない。
内容
愛は続く。一方的に、執拗に。永遠に。「ぼく」につきまとい、病的なまでに愛を乞う男。その男の存在すら信じず、「ぼく」の狂気を疑う彼女―。孤独と恐怖、強迫的な愛の織りなす奇妙な三角関係。
ここが凄い!
- 文章が平易で読みやすい。
- 主人公のキャラクターがユニーク。こんな設定なのに決して男前ではなく中年の科学ジャーナリスト。
- 困難な状況に陥ったときの主人公の考え方が独特。これが他のストーカーサスペンス小説との差別化になっている。
- ストーカーになる男が怖い!怖いですよ?
- ストーリー自体は平凡。なのにここまで読ませるのはさすが。
- 一人称小説にありがちな退屈さを回避するための作者の細かい気遣いがにくい。
イアン・マキューアンの小説を読むのはこれが始めて。
マキューアンはこの次の作品の『アムステルダム』でブッカー賞をとりますがそれはこの『愛の続き』で賞を取れなかったことへの埋め合わせでないかとも言われています。
うーんこれは正直自分の苦手なタイプの小説でした。
今まで自分に合わなかったジョン・ファウルズの『魔術師』、ハットンの『偶然の犯罪』、ロバート・ゴダードの『千尋の闇』そして今回の『愛の続き』ってなんか似ているんですよね。
- 作家がイギリス人。
- 主人公が男性。
- 一人称。
- 主人公の愚かな行為によって困難な状況に陥る。
- ラストすっきりしない。
こういったタイプの小説を喜ぶイギリス人読者っていったいどういう人種なんだろと考えてみたんですがある相反する仮説をおもいつきました。
1イギリス人読者S説
彼らは根っからのSである。たとえ一人称小説であっても決して主人公に感情移入することなくけらけら笑いながら主人公の苦難を楽しむ。
2イギリス人読者M説
彼らは根っからのMである。主人公に思いっきり感情移入するのであるがMなので主人公が苦しめば苦しむほど楽しく気持ちよくなる。
え〜と個人的にはイギリス人読者S説に一票です。
もしかしたら自分はイギリス小説全般が苦手なのかもしれない。
ピーター・ラヴゼイやコリン・デクスターは好きなんだけどなあ。
ミネット・ウォルターズやル・カレ、ギャビン・ライアル、P.D.ジェイムズなどは全然あかんかった。
なんでだろ。
あーあとこの本読んで分かったんですが、語尾上げ話法(おもしろいですよ?みたいなやつ)は日本だけの現象じゃなかったんですね。確かにあれはむかつきますよ?
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