アメリカンタブロイド

凄い
初めて読み終わったときは興奮してなかなか寝付けませんでしたよ。こんな体験久しぶりかも。
正直ここ最近は本を読むという行為に飽きがきていたのですがこの本はその倦怠感を吹っ飛ばしてくれました。なんともパワフルな作品です。
とにかくお勧めの作品です。
ジェイムズ・エルロイ森博嗣の百冊の中で知ったのですが、あまり興味はもてませんでした。
なんとなく暗く複雑で暴力的な雰囲気にどうにもひかれなかったんです。
ところが池澤夏樹さんの『世界文学を読みほどく』にもエルロイの名前が出てきたので俄然興味をもったんですね。
そこで紹介されていたのはこの作品の続編にあたる『アメリカンデストリップ』。
この作品はエルロイの“アンダーワールドUSA三部作”の二部にあたる作品です。
何でもケネディ暗殺の内幕について書いてある小説だとか。面白そうじゃないですか。
まあどうせ読むなら最初から読もうと思い『アメリカンタブロイド』に手を出してみたわけです。
で圧倒されました。
一筋縄ではいかない登場人物たち(みな悪党!)と複雑なストーリー。
ケネディ兄弟、マフィア、CIA、FBIキューバ革命、ハワードヒューズ、麻薬、ピッグス湾、KKK etc...。
ピートボンデュラント、ケンパーボイド、ウォードJリテルの三人がお互い裏切ったり裏切られたり騙したり騙されたり出し抜いたり出し抜かれたりしながら強烈にアメリカの「時代」を生きていきます。
そして最後はケネディ暗殺。
ケネディ暗殺の時代状況についてまったく知らなくてもこの本を読むのに何の支障もありません。事実私がそうでしたから。
ただマフィアがどういう存在であるかは映画の『ゴッドファーザー』などを見て知っといたほうが良いかもしれません。マフィアおそろしー。
難をつけるなら登場人物の多さですかね。というよりは本冒頭の登場人物紹介の少なさ。まあ全員を網羅するのは無理なのは承知なんですけどね。
とりあえず私なりにまとめてみると<主役陣>
ピート・ボンデュラント
ケンパー・ボイド
ウォード・J・リテル<マフィア>
サム・ジアンカーナ
サントス・トラフィカンテ
カルロスマルチェロ
ハシー・リスキンド<CIA>
ジョン・スタントン
ガイ・バニスター
チャック・ロジャーズ<主役陣のボスたち>(主役陣は複数のボスの下で働いている)
エドガー・フーヴァー
ケネディ兄弟
ジミー・ホッファ
ハワード・ヒューズ


こんな感じです。ほかにも情報屋のレニー・サンズや主役陣の娘や恋人、キューバ人の殺し屋などまだまだいます。この中には実在の人物も含まれています。
そして彼らが変節したり変容したりしながら騙したり騙されたりするわけなんですね。
うーん複雑なストーリ。でも読みにくさはあまり感じません。私は一気に読めました。
独特の文体に最初は戸惑いましたけどね。
とにかく面白いので最近面白い本無いかなあとお探しの人にはお勧めの作品です。

アメリカン・タブロイド〈上〉
ジェイムズ エルロイ James Ellroy 田村 義進
文藝春秋 (1998/01)
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