ベストアメリカンミステリ・ハーレム・ノクターン

ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン
J・エルロイ&O・ペンズラー 木村 二郎 他
早川書房 (2005/03/09)
売り上げランキング: 39,634


編者がジェイムズ・エルロイだったので読んでみました。
エルロイの序文がエルロイ節炸裂で面白かったというのもあります。
以下一部引用

プロットと人物描写は即座に融合しなければならない。啓示は読者の心をとらえ、強くつかんでいなければならない。世界は明快な語句と含蓄から成り立たなければならない。バランスは完璧にとられなければならない。
短編ミステリ小説は技術の中の技術である。プロットの必要性は例のバランスを厄介にさせる。ミステリ小説は犯罪小説である。犯罪小説は優れた筋と対等の人物展開の技能を有する普通小説である。プロットの網を広〜く放り投げることは比較的たやすい。その網を短編小説の寸法に収縮させることは長編小説家を傷つける。うん――だが、その傷はあまりにも心地よすぎるのだ。
簡潔。正確。本質を抽出しろ、さもなければ、読者の嘲笑に晒されろ。物語で刺せ、啓示でたたけ、プロットで破裂させろ。

アハハ言いたいことの十分の一も理解できない。

さて本編ですが、かなり良かったです。短編が苦手な私でも十分楽しめました。
入ってる作品数は二十篇。どれも良作ばかりです。
マイクル・コナリーやトマス・H・クックなどの有名どころもいます。
こういった様々な作家の短編集なら楽しめるんですよね。飽きが来ないから。
あと普段読まない作家の作品を読めるので興味の幅が広がるというのもあります。
今回気に入ったのは

  • ベフカルに雨は降り続ける(ジョン・ビゲネット)舞台が新鮮。
  • ファミリー・ゲーム(ブレンダン・デュボイズ)ジス・イズ・アメリカみたいな。
  • デトロイトから来た殺し屋(ジョー・ゴアズ)後味が良い。
  • 幻のチャンピオン(ジェイムズ・グレディ)時代が新鮮。
  • コバルト・ブルース(クラーク・ハワード)友情の物語。
  • 数を数える癖(フレッド・メルトン)少年と叔父が。
  • ハイスクール・スィートハートジョイス・キャロル・オーツ)奇妙な味。
  • ハーレム・ノクターン(ロバート・B・パーカー)格好良いなあ。
  • 夜の息抜き(F・X・トゥール)ボクシング・ノワール

特に夜の息抜きはすごいですね。ボクシングおよびトレーニングのデティールがすごい。
さすがに元本職だっただけのことはあります。
でももう亡くなってしまったんですよね、残念。
F・X・トゥール氏はクリント・イーストウッドが監督主演した『ミリオンダラー・ベイビー』の原作者でもあります。
69歳で作家デビューしたそうです。すごいなあ。